俺のログには何もないな

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【雑記】知らない街を歩く

 

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ふと今まで行ったことのない、何の思い入れもないような町に一人で行きたくなる衝動に駆られる。

先日そういう思いに駆られて、全く計画を立てずに出かけてみることにした。

 

 

 

13時半に徒歩で家を発つと、駅に着いた頃には14時を過ぎていた。

路線図を見ると名前しか知らない地名がいくつも並んでいて、特に決まった目的地も無いので気まぐれに1つの駅を選んで切符を買う。

 

切符を買った後に時刻表を確認していなかった事に気付くぐらいには何も考えずに選んだけれども、幸いあと数分で指定した駅に向かう電車が出るところだった。

とはいえその日の予定は他になかったので、別に次の電車が何分後でも特に問題はなかったが。

 

まだ自動車免許を持っていなかった頃、電車通学をしている時期があった。しかし、免許を取ってからというもの、全く電車に乗る機会がなくなったため、電車に揺られて車窓を眺めている時にその頃の自分を思い出す。

そうやって色々考えていると、気が付いた時には既に降りる駅に着いていた。乗車駅から少し離れた駅を選んだつもりだったが、何か考えている時の時間の流れは本当に早い。

 

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電車を降りて周りを見渡すと当然ながら見慣れない景色が広がっていた。全く知らない土地なのに、そこでずっと探してきた人達がいて、それぞれの生活があったんだと思うと少し不思議な気分になる。

再三書いているがこれといった目的地はないため、電車から降りた僕は急に放り出されたような気分で、とりあえず散歩をしながら行くあてを探すことにした。

 

少し歩いたところで現在地をスマホで調べてみると、今いるところから少し離れたところに大きな公園と、古民家を改造したカフェがあるようなのでそこを目指して歩くことに決める。

梅雨入り前とはいえもう6月で、その日は特に天気も良く蒸し暑かったが、個人的な感性として真冬の寒い日にストーブに当たったり真夏の暑い日に暑い思いをしながら運動に励んだりする事が好きだったので、気分はそれほど悪くなかった。

マイナス要素があるとすればこの暑い日にマスクを着けていなければならない事ぐらいだろう。

 

途中コカコーラのイラストが大きくプリントされた自販機があったので、それに誘われるようにお金を入れたが、既にコーラは売り切れていた。強い日差しのせいで、売り切れを表す光が見えにくくなっていたようだ。

当初、コーラを買うつもりで自販機まで歩いてきた僕の気分は甚だ落ち込んだが、そのまま何も買わずに行くのも躊躇われたため、妥協案としてスコールを買うことにした。

自販機から取り出したスコールは、暑く火照った自分の手にもぬるく感じる温度で、蓋を開けると同時に中から炭酸が噴き出してきた。

コーラが売り切れていたのは単に人気だからだと考えていたが、もしかすると利用者の少なさ故に補充の頻度が少ないからかもしれない。

地方都市のさらに郊外にある田舎町なので、実際にそんな原因だったとしても納得がいく。

 

ぬるいスコールを半分ほど飲んでまた歩き始める。噴き出した時に手についたスコールの泡がベタベタとした感触を与え、いくらか旅の興が削がれたが、目的地とした公園が見えてきたのでそこで手を洗うことにした。

 

公園の中心部にはとても大きな楠があった。

石碑に書き記されていた詳細に一応目を通したもののその殆どは頭に入らなかったが、それは樹齢800年の大楠らしく、その大楠の裾は、そこに建てられた歴史上の人物の墓を侵しながらなおも、大きく成長を続けていた。

 

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公園にある水飲み場で手を洗ったあと、少し熱を冷ますために木陰で休み、その後またカフェに向かって歩き始めた。

公園からカフェまではそう遠くなかったし、水分補給と休憩を挟んだのもあって、すぐに着く事ができた。

 

知らない土地の知らない店に1人で入るのは少し躊躇われたが、店の外観が良くレビューサイトでの評判も良かったので入ってみることに。

 

店に入ってもしばらく誰も出て来ず、店の奥からは数人の声が響いてくる。違和感を感じ、誰も出てこないならそのまま店を出ようかと考えていると、年配の女性が玄関の隣にあった部屋から姿を見せた。

 

女性は僕を見るとキョトンとした顔をして、まるで僕から話し出すのを待つように黙ったままだ。自分は接客にうるさい方ではないが、客が来たのにその態度はいかがなものかとは思いつつ、黙っていても始まらないので「あの」と声をかけると、女性は「今日はもうお店閉めたんですよ。」と。

 

少し話を聞くと、いつも14時には店を閉めているらしい。通りであの顔をしたわけだ。営業時間外に急に客が入ってきたら対応に困るのも当然だろう。

それを聞いて僕は退店しようと思ったが、簡単な物なら今からでも作れるということだったので、そのままその店で少し遅い昼食を取ることにした。他に行くアテもなかったし、かと言ってぬるいスコールを飲んだだけの旅にもしたくなかったからだ。

 

その店は古民家を改造したもので、大きな梁や柱がむき出しになっていたが、店に飾られている古風な家具と相まってどこか懐かしい雰囲気を感じさせられて、落ち着けるいい店内だった。

注文したホルモン定食も評判通りの味で大いに満足できた。お年寄りが集まって経営している店だが、初めて来た店とは思えない程温かみがあって馴染みやすく、家の内部を紹介してもらいながら見て回ったりして良い思い出になった。

 

 会計を終えてその店を後にし、少し歩き疲れたのでそのまま風景や家の写真を撮りながら帰ることにした。一人きりでの小旅行を何度かしたことがあるが、行きと帰りの体感時間はその時々で変わる。この日は帰りの方がずっと短く感じられた。

駅に着くと時刻はもう17時を過ぎていて、帰りの電車は行きの時より混んでいた。

 

最近観た洋画の音楽を口ずさみながら、家路につく。いつも一人旅を終えた後の自宅は、普段と違った雰囲気を感じさせる。

 

この記事を書いているのは旅をした二週間ほど後であるが、それは僕に昨日の事よりも詳細に思い出させた。